2018/01/18
ソーラー電力だけで走行するエネルギー自給自足型の自動車がオランダで開発中
ニューズウィーク日本版 1/17(水) 18:32配信
「CES 2018」で、ソーラー電力だけで走行するスタートアップ企業「ライトイヤー」が、気候変動対策に注力する企業を表彰する「気候変動イノベーター」賞を受賞した
コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)は、毎年1月、全米民生技術協会(CTA)が米ラスベガスで開催している国際家電見本市だ。大手メーカーを中心に新製品や最新技術などが披露されるほか、創業間もないスタートアップ企業を集めた専門エリア「ユーレカ・パーク」も近年、人気を集めてきた。
ソーラー電力だけで走行するエネルギー自給自足型の自動車「ライトイヤー・ワン」-Youtube
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とりわけ、2018年1月の「CES 2018」では、温室効果ガスの排出削減など、気候変動対策に注力するスタートアップ企業を表彰するプログラム「気候変動イノベーター」が新設され、オランダ南部ヘルモントでソーラーカーの開発に取り組むスタートアップ企業「ライトイヤー」がこれに選出されている。
■ 車両ルーフに太陽電池を搭載し、バッテリーに蓄電
「ライトイヤー」が現在開発中の「ライトイヤー・ワン」は、車両ルーフに太陽電池を搭載した4人乗りの電気自動車で、太陽光発電によって得た電力を使って走行する点が特徴だ。太陽光発電ができない夜間などでも走行できるよう自動車に搭載されたバッテリーによって電力が蓄積される仕組みとなっており、最長800キロメートル程度の走行が可能だという。
「ライトイヤー」を創業したのは、蘭アイントホーフェン工科大学(TU/e)を卒業した元学生チームの5名だ。在学中の2012年からソーラーカーの開発に取り組み、豪州3000キロメートルもの縦断に挑むソーラーカーレース「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に二度出場した実績を持つ。
レースを通じた実証実験のもと、重量や快適性、デザイン性などにおいてさらなる改良を重ねながら「ライトイヤー・ワン」の開発がすすめられており、2019年には、税抜き価格11万9000ユーロ(約1600万円)で、販売を開始する見通しだ。
■ 「ソーラー電力だけ」に、懐疑的な見方も根強い
トヨタ自動車が2017年、新型「プリウスPHV」にソーラー充電システムを実装するなど、太陽光から得たエネルギーを駆動用電力として利用しようという試みはすでにいくつかあるが、「ソーラー電力だけで自動車を走行させる」というコンセプトについては、懐疑的な見方も根強い。
その根拠として、米国のエンジニアのトム・ロンバード氏は、車両ルーフの太陽電池によって得られる最大馬力を実際に試算。太陽から地上に届くエネルギーが1平方メートルあたり800ワット程度で、車両ルーフの面積が合わせて6平方メートルと仮定すると、車両は4800ワットの電力が得られることになり、これを馬力に変換すると6.4馬力程度と算出される。日本の軽自動車の最高出力が64馬力であることをかんがみると、けして十分なものとはいえない。
■ 完全ソーラー化車両の試みは他にも
しかし、車両を完全ソーラー化しようという動きは、「ライトイヤー」のほかにも、いくつか現れはじめている。たとえば、豪州のバイロンベイ鉄道では、2017年12月、太陽光発電によって得られた電力だけで走行する電車の運行を開始。また、スペインのスタートアップ企業「エヴォヴェロ」は、ソーラーパネルを搭載したエネルギー自給自足型の電気三輪車の開発をすすめている。
技術面からクリアすべき課題は残存しているものの、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを活用し、走行に必要なエネルギーを“自給自足”する車両が、電車から自動車、小型のパーソナルモビリティまで、様々なかたちで実現されるのも、そう遠い未来の話ではないかもしれない。
松岡由希子
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