2017/08/07
<再生エネ>市民共同発電1000基…福島急増、全国2位
毎日新聞 8/2(水) 14:00配信
市民の出資による再生可能エネルギーで発電し、収益の一部を地域などに還元する「市民・地域共同発電所」が今年、全国で1000基を超えたことが分かった。都道府県別では、福島県が過去3年半ほどで急増し、全国2位になった。東京電力福島第1原発事故後、県民や県の再生エネ推進姿勢が影響したとみられる。
市民・地域共同発電所の累積数と年間設置数の推移
地球温暖化防止を目指すNPO「気候ネットワーク」(京都市)の豊田陽介主任研究員が全国約100の関係団体にアンケートを送るなどして調査した。
市民・地域共同発電所は1994年に宮崎県で太陽光発電所ができて以降、温暖化防止や脱原発を目的に寄付金などを基に各地で設置された。再生エネによる電気を大手電力が高い値段で購入する固定価格買い取り制度(FIT)が2012年に始まると、建設に拍車がかかった。
調査では11年末に458基だったのが今年1月には1028基になった。総設備容量は計8万9488キロワットに上る。都道府県では(1)長野353基(2)福島92基(3)東京83基(4)京都50基(5)愛知45基−−だった。
福島県は13年9月は3基で全国26位だったが、震災後に設立された会津電力(喜多方市)が14年以降に48基を建設。他の地域でも相次ぎ、原発事故で避難生活を送る富岡町の住民が主体となった「富岡復興ソーラープロジェクト」が出力3万2000キロワットの太陽光発電所を建設中で来年3月に完成予定という。同県は40年までに県内で必要なエネルギーを再生エネで賄う目標を掲げ、支援している。
長野県では「おひさまエネルギーファンド」(飯田市)によって多くの共同発電所ができた。
順調に伸びてきた市民・地域共同発電所だが、15年から伸び悩んでいる。「太陽光発電の買い取り申し込みが増え過ぎて、需要を上回る恐れがある」などとして九州電力など5電力が新規購入を抑制する動きを見せたためだ。年間の新規設置数は14年の213基がピークだったが、15年は138基、16年52基と福島事故以前のレベルに戻ってしまった。豊田研究員は「電力買い取りを拒否されるリスクが生じ、金融機関からの資金調達が難しくなった。再生エネを優先的に使うのが環境にも経済にも合理的。国内の制度を改善すべきだ」と指摘している。【大島秀利】
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◇再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)
太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスの5種類の再生可能エネルギーで発電した電力を、大手電力会社が一定期間、決まった価格で買い取る。
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