2017/03/31
太陽光発電の安全対策を強化、設計施工の標準仕様を策定へ
スマートジャパン 3/30(木) 7:10配信
2017年4月から改正FIT法が施行され、太陽光発電事業をとりまく環境は大きく変化する。設備認定が事業計画認定へ変わり、設備の安全対策や運用保守の重要性がこれまで以上に強く求められる。
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現在、改正FIT法の施行に向けて、既に運転を開始している発電所を含め、新しい認定制度への移行が進んでいる。一方、この背後で議論が進んでいるのが、太陽光発電所の設計施工に関する基準の策定だ。2017年3月21日に開催された第15回 電力安全小委員会では、設計施工の基準策定に関する今後の方針が示された。
設計施工の基準策定へ
改正FIT法における新認定制度では認定の基準として、保守点検や維持管理の計画、関係法令の順守、設備の廃棄計画などが挙げられている。つまり主には「事後の運営」に評価の重きが置かれている。
一方、太陽電池発電設備については台風によるパネルの飛散や倒壊など、公衆安全に影響を与える損壊被害も発生している。経産省の調査によるとこうした背景には、「設計基準風速を把握していないなど技術基準を正確に理解していない」「安全裕度がほとんどない」「不適切な施工方法により設計強度に達していない」といった原因が散見されたという。
そこで「事後の運営」だけでなく、設計や施工といった「事前の工程」についても標準仕様の策定を行い、さらなる安全対策を強化しようという動きが進んでいる。経産省はこれまでも500〜2000kWの設備を使用前自己確認の届出対象に追加するなどの施策を行ってきたが、全ての規模の太陽光発電所を対象とする設計施工の標準仕様を明示する予定だ。
具体的には基礎の設計例などの標準仕様を、経産省が定める技術基準の中に例示し、強度計算を実施しない場合の地上設置型の設計は、この標準仕様に準拠することを求める方針だ。標準設計例の提示について、2017年度中に電気設備の技術基準の解釈解説を改正していく。
標準仕様の考え方も明示
策定する標準仕様は、強風地域や多雪地域など、設置環境に差異があることを考慮し、「一般仕様」「強風仕様」「多雪仕様」の三形式を定める方針だ。また、設計荷重の計算は、日本工業規格(JIS C8955)の中でも、より安全裕度の高い方法で計算する。
太陽光発電所の設置を想定する地盤は、比較的悪い地盤を想定し、粘性土で、N値3、長期許容支持力20kN/m2、地盤との摩擦係数は0.3を目安とする。
支持物の基礎は鉄筋コンクリート基礎に限定し、使用する部材の材質も限定する方針だ。なお、鋼材、ボルト、ナットなどは、市販品の使用を想定し、部材の接合方法はボルト接合に限定する。使用する太陽電池モジュールについては、市販品の中でも風荷重や雪荷重が不利となる大型の太陽電池モジュール(2000×1000mm) を想定したものとする。
飛散・感電防止に向けた対策も
太陽電池モジュールは経年劣化などの影響により、強風で飛散する可能性があり、既設設備でも太陽電池モジュールの飛散抑止に向けた施策が求められる。また、光が当たると常に発電するため、水害などにより太陽電池モジュールが水没した場合に、感電を防止するための安全対策の手法も検証していく必要がある。
そこで2017〜2018年度にかけて耐風圧試験による構造安全性評価や水没実験による感電リスク評価を実施し、その実験結果を踏まえ、2019年度中にこれらに対する簡易な安全対策を検討。同時に電気設備の技術基準の解釈および解説の改正についても検討する方針だ。
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