2016/12/19
買取価格が下がっても利益を上げる、メガソーラーで2780万円のコスト削減
スマートジャパン12/15(木) 7:25配信
太陽光発電システムメーカーのサンテックパワージャパングループが12月13日に、千葉県の北部に広がる香取市内でメガソーラーの運転を開始した。香取市は太平洋に近く、大きな川や湖に囲まれた水郷地帯で知られる。
メガソーラーの敷地面積は4万8000平方メートルで、合計7600枚の太陽光パネルを設置した。発電能力は2.4MW(メガワット)になり、年間の発電量は276万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して770世帯分の電力を供給できる。
発電した電力は固定価格買取制度で売電する。2013年度に買取制度の認定を受けて、1kWhあたり36円(税抜き)で売電できるため、年間に1億円弱の収入を得られる想定だ。メガソーラーの運用保守もサンテック社みずからで実施する。
サンテックパワージャパンは中国に本拠を置く太陽光発電システムのメーカーで、太陽光パネルには自社製の多結晶シリコンタイプを採用した。それと合わせて電力を変換するパワーコンディショナー(パワコン)のほか、太陽光パネルを設置する架台にも中国製を採用してコスト削減を図った。
パワコンは中国ファーウェイ社の製品で、1台あたりの出力は27.5kW(キロワット)と小型だ。この小型のパワコンをメガソーラーの各所に分散して配置した。サンテック社によると、大型のパワコンで集中処理する方式と比べて、メガソーラーの発電能力1kWあたり0.5万円の導入コストを削減できる。
小型のパワコンは稼働中の発熱量が少なく、冷却用のファンが不要なため、消費電力が低くなるメリットもある。機械部分が少なくなって故障率も低減する。こうした点から稼働後の運転維持費も削減できる見込みだ。
太陽光パネルを設置する架台には、中国の厦門(アモイ)キングフィールズテクノロジー社の製品を採用した。日本製で同等の品質の架台とコストを比較したところ、発電能力1kWあたりで0.7万円の差があった。サンテック社は安全性や耐久性を確認したうえで日本国内に導入することを決めた。
中国製の小型パワコンとアルミ架台を採用したことにより、1kWあたりのコスト削減額は1.2万円になった。香取市のメガソーラー(2387kW)では、合わせて2870万円のコストを削減できた。全体の事業費は非公開だが、国内の標準的な太陽光発電システムの価格(約29万円/kW)に対して4%程度のコスト削減になる。
太陽光発電の買取価格は20円を切る時代に
サンテック社がメガソーラーのコスト削減に取り組んだ背景には、固定価格買取制度の買取価格が年々低下していることがある。2012年度の制度開始当初は40円だった買取価格が2016年度には24円まで下がり、さらに2017年度には21円になる。しかも発電能力が2MW以上のメガソーラーの買取価格は入札によって決める。もはや20円を切るのは時間の問題になってきた。
資源エネルギー庁の分析によると、日本国内で事業用に導入する太陽光発電システムの価格は、2016年の平均値で1kWあたり28.9万円である。これに対して太陽光発電で先行するヨーロッパでは、2年前の2014年の時点でも15.5万円で格段に低い。日本では太陽電池モジュールをはじめ、パワコン、架台、設置工事のすべてが割高な状況だ。
過去5年間の太陽光発電システムの価格を見ても、発電能力が500kW以上では30万円前後のまま横ばいの状態が続いている。政府は今後も買取価格を引き下げて、発電事業者にコスト削減を促す方針だ。システム価格を2020年に20万円/kWへ、2030年には10万円/kWまで低減することを国の目標に掲げている。火力発電のコストよりも低く抑えて再生可能エネルギーの電力を拡大する。
買取価格が低下する中で、コストを削減できない発電事業者はメガソーラーの開発競争から取り残されることになる。政府は太陽光発電の買取価格を決めるにあたって「トップランナー方式」を採用している。直近の実績データをもとに、システム価格が低いほうから上位25%を基準に買取価格を算定する方式だ。
2016年の実績データでは、発電能力が1000kW以上のシステムの中央値(上位50%)は28.2万円だが、上位25%になると24.4万円まで下がる。その差は3.8万円と大きい。政府が2017年度の買取価格を21円に決定した時にも、システム価格は24.4万円を採用している。
今後さらに海外製の低価格な太陽光パネルやパワコンなどを導入してコスト削減に取り組む発電事業者が増えることは確実だ。そうなると上位25%のトップランナーのシステム価格はいっそう低下していく。買取価格が20円を切っても利益を上がられる発電事業者だけが導入量を増やせる時代になる。 |