2016/11/21
太陽光の屋上設置に新機軸、ユーザー参加型の体験型施工サービス
スマートジャパン11/15(火) 7:10配信
プロのサポートのもと参加者が架台組立
市民参加型のエネルギー事業をプロデュースする地域エネルギー会社・たまエンパワー(東京都多摩市)が、このほど屋根上ソーラー体験型施工サービス「DiO」を開始した。DiOは「Do it Ourselves」の略。太陽光発電設備を導入する建物のオーナーや利用者らに、自らその設置作業に参加してもらおうという試みだ。
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電気工事に関わる部分など、専門性の高い工程はプロ(たまエンパワーの契約施工店)が担う。素人であるユーザー側が担うのは、パネルの運搬や、架台の組立作業など。プロの管理・指導のもと、全体の施工品質を確保しつつ、ユーザー自身が作業に関わる日本初のサービスだ。
DiOは、このように設置作業の一部をユーザー側が担っているので、施工店の工数が減り、施工費用のローコスト化を可能にする。最終的には、設置作業のみならず施工にかかるプロセス全体を見直すことにより、通常施工費用より25%程度のコストダウンを見込むとのことだ。
同時に、「太陽光パネルを設置するという未知の“体験”は、参加した人たちに多くの“学び”をもたらす」(山川勇一郎社長)とも期待される。たまエンパワーでは、“体験”という付加価値によって、環境意識啓発やコミュニティ活性化にもつなげていきたい考えだ。
施工しやすい置き型架台を採用
DiOによる太陽光発電設備の設置は、陸屋根(傾斜のないフラットな屋根・屋上)の建物が対象となる。架台には、ドイツK2社の陸屋根用架台「D-Dome」が採用されている。D-Domeは、アンカーを打たない置き型架台で、施工性に優れていることが最大の特長だ。適切な指導があれば、素人であってもプロ同様の精度で仕上げることができるという。山川社長は、「この架台があったからこそ、DiOを実現できた」と話している。
架台D-Domeをはじめ、太陽光パネル、パワーコンディショナなど資材・機器の供給は、ドイツ太陽光専門商社Krannichの日本法人クラニッヒ・ソーラー(愛知県名古屋市)が担当する。同社は、たまエンパワーと連携してDiOの一翼を担う。
施工品質を維持する上で重要になってくるのが、ユーザーの作業を現場でサポートする施工店の能力。これについては、契約施工店にDiOのための研修を受けてもらうことで、クオリティを担保する。契約施工店の指導は、架台D-Domeの施工に豊富な実績をもつ太陽住建(神奈川県横浜市)が担当する。
DiOは、たまエンパワーを窓口に、クラニッヒ・ソーラーによる資材提供、太陽住建による施工支援という3社共同プロジェクトとして展開される(図3)。
地域を巻き込んだ普及を目指す
DiOは陸屋根であれば規模を問わないので、個人宅からビルの屋上まで、さまざまな建物が対象となる。ただし、参加者の安全確保の観点から、次の3点が条件となる。パラペットの立ち上がりがあること(手すり代わりになる周縁部の壁)、屋根へのアクセスが可能なこと、建物高が20m(メートル)以下であることだ。なお、ユーザー側の施工参加にあたっては、万一に備えての保険も用意されている。
たまエンパワーでは、DiOならではの意義が発揮される場所として、企業や教育機関、マンションなどの建物を挙げる。会社であれば、「社員を巻き込んでDiO施工をすることにより、再エネによる環境対策をローコストで実現でき、社員の環境意識啓発にも活用できる」。大学であれば、「施設のエネルギー対策に加え、ゼミや環境関連科目のカリキュラムの一環として、学生を巻き込んでの実施が可能」だとする。マンションであれば、「防災意識向上のため、住民自ら施工することが想定される」という。
同社では今後、DiOの普及を地域とともに進めるべく、ネットワークを拡げていく。地域の施工店を「施工パートナー」として組織化するとともに、市場開拓や参加者の取りまとめを行う「展開・仲介パートナー」を募集する。市民電力や商店会、マンション管理組合、リフォーム業者、建築・設計事務所などにも、幅広く呼び掛けていく方針だ(図4)。
「みんなで作る」という体験は、再生可能エネルギーを地域に根付かせていく上でも重要な意義をもつ。DIY(Do It Yourself)文化が浸透している欧米とは違い、何事につけ専門家に任せてしまうことの多い日本にあって、DiOがどれほど受け入れられていくのか注目されるところだ。 |