2016/11/14
消費電力量実質ゼロの住宅・ZEH 資産価値の高まりに期待
マネーポストWEB11/11(金) 11:00配信
11月4日、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」が発効した。その中では2020年以降の地球温暖化対策について、世界全体で産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることが目標に掲げられている。
前身となる京都議定書と違って、先進国だけではなく新興国や途上国も温室効果ガス削減に取り組む。中でもEUは、2050年に1990年度比で温室効果ガスの排出量を80〜95%削減するといったロードマップを発表しており、消費電力量のほとんどが再生エネルギーで賄う内容となっている。
一方、日本は「2050年までに80%削減」の目標を掲げており、2015年のパリ協定が採択された際には「2030年までに2013年度比で26.0%の削減」という目標が盛り込まれた草案が提出されている。政府が省エネ社会実現に向け取りまとめた「長期エネルギー需給見通し」では、この目標達成に向け、最終エネルギー消費を4割削減するとしている。
そこで注目を集めているのが、家全体の省エネを図るネットゼロエネルギーハウス「ZEH」(ゼッチ)の普及だ。
ZEHは石油や天然ガスなどの一次エネルギーの年間消費量が実質ゼロとなる住宅のことで、省エネと創エネを併せて消費電力量をカバーしようとするものだ。ZEHは建物の断熱性向上や省エネ機器の導入、また消費電力量が見えるスマートメーターの導入などにより省エネを測りながら、太陽光発電システムやエネファームなどによる再生可能エネルギー導入による創エネによって実現される。
政府の目標では、2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現し、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現することが掲げられている。
パリ協定において2050年度における温暖化ガス排出量を「実質ゼロ」としているEUは特に導入に積極的で、イギリスでは2016年以降、ZEH基準を満たす住宅だけが新築できるとされ、フランスでは2020年までに全ての建築物ZEH化するとしている。
日本でも既に2012年度から補助金が交付されており、導入が政府により支援されている。
自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を2020年までに50%以上とする目標を掲げるハウスメーカーや工務店等をZEHビルダーと呼ぶが、その登録数は2016年11月8日公表分で3700を超える。一般社団法人・環境共創イニシアチブのHPに社名が掲載されているので、家を建てる際は参考にしてみるのも良いだろう。
大手ハウスメーカーも数年前からZEHを発表しており、例えば戸建住宅販売戸数トップの積水ハウスでは「グリーンファーストゼロ」というZEH対応住宅を提供しており、その採用率は74%に達する。パナホームでは政府の2020年目標より2年前倒しで戸建住宅全てにおいてZEHとなる目標を掲げ「カサート」や「ゼロエコ」を展開。ミサワホームは1998年世界で初めてのゼロエネルギー住宅「HYBRID-Z」を提供しており、ほか三井ホームや住友林業などもZEH対応住宅を展開している。
現在、政府は住宅の査定方法の改定を進めており、買い替え、 売却時に築年数ではなく、質の高さが取引価格に反映されるよう評価の仕組みを見直す意向も示している。そうした中で、将来的にZEH対応住宅の資産価値は大いに高まる可能性がある。これから家を建てる予定がある人にとっては、地球温暖化対策に加え資産防衛の面からも、一考の余地があるだろう。
文■小池麻千子(グローバルリンクアドバイザーズ):アナリストとして企業リサーチを担当。訪問企業は海外企業を中心に多数。企業訪問・分析で培ったファンダメンタルズ分析を用いたボトムアップリサーチによる銘柄選定を得意とする。 |