2016/10/03
大型の蓄電池を備えたメガソーラー着工、太陽光発電の出力変動を抑える
スマートジャパン 10月3日(月)11時25分配信
大型の蓄電池を備えたメガソーラーを建設する場所は、北海道の空の玄関口である「新千歳空港」に近い苫小牧市内の林地だ。空港の敷地から南に1キロメートルほどの至近距離で、平坦な林地を造成してメガソーラーを建設する。用地の面積は78万平方メートルにのぼる。
北海道と鹿児島県を中心にメガソーラーを展開する日本グリーン電力開発が建設・運営する。10月5日に着工して、2018年8月に運転を開始する予定だ。発電能力は38MW(メガワット)に達する。年間に3700万kWh(キロワット時)の電力を供給できて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万世帯分を超える。
このメガソーラーの最大の特徴は、容量が1万kWhもある大型の蓄電池システムを併設する点にある。電気自動車の「日産リーフ」の最新モデルに搭載している蓄電池の容量は30kWhで、それと比べて300台分以上に匹敵する規模になる。韓国のLG化学が製造するリチウムイオン蓄電池を導入する。
蓄電池の併設で建設費が15%増える
太陽光発電では天候によって出力が変動する問題が常につきまとう。電力会社は出力の変動に合わせて火力発電の出力を調整しながら、企業や家庭に供給する電力を安定化させている。太陽光発電の出力変動には短い周期と長い周期の2種類があり、このうち短周期の変動幅が大きくなると火力発電の出力調整で対応できなくなってしまう。
そうなると電力の周波数が不安定になり、企業や家庭で使う電気機器に悪影響を及ぼす可能性がある。太陽光発電による短周期の出力変動を蓄電池で吸収して緩和すれば、火力発電の出力調整で対応しやすくなる。
北海道では固定価格買取制度が始まった2012年度から大規模なメガソーラーの建設計画が相次いだため、2013年4月に北海道電力が全国に先がけて規制に乗り出した。発電能力が2MW以上のメガソーラーを建設する場合には、蓄電池などを併設して出力変動を緩和しないと、送配電ネットワークに接続できなくなった。しかも出力の変動量を1分あたり1%以下に抑えることが条件だ。
苫小牧市に建設するメガソーラーでは、発電設備全体の出力をエネルギーマネジメントシステムで監視しながら、出力が急増した場合には蓄電池に充電して吸収する。逆に出力が急減すると、蓄電池から放電して変動を緩和する仕組みだ。
メガソーラーから送電する電力は最大で25MWの設計になっているため、出力変動を1分あたり250kW(25MWの1%)以下に抑える必要がある。その条件に合うように蓄電池の容量を試算した結果、1万kWhが最適だった。「蓄電池を併設することで建設費は15%くらい増える」(日本グリーン電力開発の吉丸成人氏)。建設費の総額は100億円を超える見通しだ。
それでも固定価格買取制度の認定を2012年度に取得した案件であることから採算をとれるめどが立った。買取価格が1kWhあたり40円(税抜き)になり、年間の売電収入は15億円弱を見込める。
日本グリーン電力開発は苫小牧市のプロジェクトを皮切りに、合計5件のメガソーラーの建設計画を北海道内で進めている。いずれも発電能力が20MWを超えて、大型の蓄電池を併設することが条件になる。2019年度末までに5カ所すべての運転を開始する計画だ。
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