2016/08/01
業界期待の星! 日本発の「ペロブスカイト太陽電池」が理論上の最高値31%の変換効率を達成できるかも
ギズモード・ジャパン 7月30日(土)12時10分配信
7年で10倍に成長する優秀なコなんです...!
太陽電池、未来の電力です。ニュースでも「新しい太陽発電システムが開発された!」とか「変換効率が数%改善!」とよく聞くものの、実際にどれだけ効率が良いのか、コストに見合ったものなのか、実感をもって理解できている人は少ないのではないでしょうか。
それも当然です、太陽光発電と一口にいっても色んな素材を使ったものが存在しています。複雑な太陽光発電テクノロジーの世界を一目でわからせてくれる、米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)によるこちらの「太陽光電池の変換効率推移」グラフをご覧ください。
ぎゃーっ!
この、なんとも雄郡割拠な状況がおわかりいただけたと思います。しかしこんな状況で、業界の注目を一身に集めている太陽光電池があるんです。それがペロブスカイト太陽光電池。上のグラフでも右下のほうで勢いよく変換効率を上昇させているやつがいます。
同じくNRELのデータを使って英国メーカーのOssilaが制作したこちらのグラフだとさらに、わかりやすくなります。
うなぎのぼりっ!
このペロブスカイト太陽光電池、実は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らのチームが「これ太陽光発電に使えるんじゃない?」と突き止めたことが始まりなんです。日本発のテクノロジーなんですねー。なんだか急に親近感がわきます。
なんと、この7年間で変換効率は20%台に突入し、太陽電池界で注目のルーキーとなっています。
太陽電池にはコストの高い素材もあれば安い素材もあり、効率が良いものもそれほど良くないものもあります。たとえ効率が良くても素材が高かったり、気温が高まると効率が下がったりするものもあり、そうすると実用的ではなくなります。ペロブスカイトは安価かつ効率も良いために期待の星となっているんですね。
そんな中、アメリカのローレンス・バークレー国立研究所の研究チームたちがペロブスカイトの結晶構造を細かく分析したところ面によって変換効率が大きく違うことを突き止めたようです。面によっては理論上の最大値である31%近くの効率を達成していたとのこと。科学誌「Nature Energy」に論文が発表されました。
ちなみに現在大量生産されているシリコン太陽電池の変換効率は17%から20%ほど。もしもペロブスカイトの結晶の方向を精密にコントロールすることができれば「ペロブスカイトの理論上の効率限界に達することも...可能かもしれない」と研究のイメージング技術を担ったDavid Ginger教授はMIT Technology Review上で語っています。
効率が高いかたちで結晶を並べればいい...と言葉にすれば単純ですが結晶の生成をコントロールするのは非常に難しいそうです。今すぐに夢のような太陽電池ができるわけではないようですね。
しかし、何に取り組めば良いのかがわかっただけでも大きな成果です。ペロブスカイトはオックスフォード大学やNRELでも研究が進められています。安くて効率が良いペロブスカイト、今後に注目です。
image by Gencho Petkov / Shutterstock.com
source: MIT Technology Review, Osilla, Nature, NREL
(塚本 紺)
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