2016/05/02
コスト低下で利回り好調!太陽光発電は「いまこそ」儲かる
HARBOR BUSINESS Online 5月2日(月)9時21分配信
再生エネルギーの固定価格買取制度が始まって4年。電力の買取価格は年々下落しているが、今から太陽光発電に投資するのはアリなのか? 太陽光発電の今を追った
⇒【資料】太陽光発電価格推移
4月から電力自由化が始まり、電力会社や料金メニューを自由に選べるようになった一方で、太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大に伴い、標準家庭で月675円が電気料金に上乗せされる。これは、474円だった’15年度から実に4割増。再生エネルギーの固定価格買取制度が始まった’12年度から比べると約10倍だ。昨今の原油安で電気・ガス料金は値下がり傾向にあるが、それを打ち消す負担増になりそうだ。
その原因は、優遇された電力の買取価格だ。10kW以上の産業用に関しては、20年間にわたって40円で買い取ると国が約束したのだ。これによって、早い時期に太陽光発電を始めた人は約10年で初期の投資コストを回収でき、残り10年は丸儲けという異常な“高利回り商品”ができあがった。その不公平感から、買取価格は年々下がり続けており、今年度は24円。今から太陽光発電への投資は手遅れのように思えるが、自身でもメガソーラー発電をしている実業家、金森重樹氏は「買取価格が高いうちに認定を受けた事業者が、最近、その権利を売りに出してきています」と話す。
「先日、ウチの妻が、36円で買い取りが約束されている権利を買い、北海道江別市など4地域で太陽光発電を始めました。5億円を借り入れて、購入総額は5億6000万円。利回りは約11%で、約13年で元が取れて、20年後には約3億円が儲かる予定です。最近、こういった権利の売買が活発になってきています。高い価格で買い取ってもらえる権利関係を急いで取得したものの、金融機関から融資がつかず着工できないケースがあり、そういう権利を持った業者が売りに出したりしているのです。高い買取価格で始められる権利を買って、今から太陽光発電を始めるのはいいと思います」
◆部材コストが低下し高利回りをキープ!
では、過去の高い買取価格でないと儲けられないのかというとそうではないという。自身も関東3か所で太陽光発電をしているソーラーマニアのライター、藤本健氏はこう説明する。
「確かに買取価格は下がっているのですが、パネルなどの設備や工事費用も値下がりしているため、利回りは今でも10%程度で回るんです。利回りは昔と変わっていませんから、24円の今から参入するのも悪くはないと思います」
かなり大雑把なたとえだが、以前なら4000万円の融資を受けて始めると、10年で元本4000万円が回収でき、残り10年で4000万円儲かるといった収益モデルだった。今では2400万円の融資で始めることができ、10年で2400万円を回収し、残り10年で2400万円儲かるといった具合だ。
ただ、数千万円もの高額なローンを組むのは、やはり勇気のいること。「そんな人に検討してほしいのが、『太陽光発電ファンド』です」と、藤本氏は話す。
「1年ほど前、私が千葉に太陽光発電を設置しようとしていて、その設置業者がファンドを行っていたんです。通常は金融機関から融資を受けるのですが、一般から出資を募って、その資金で発電所を建設・運営し、生み出された電力を売電。特別目的会社を通して、収益を出資者に分配するという仕組みです。ちょっと面白そうだったから、試しに50万円分購入してみました」
運用期間は10年で、目標利回り5.5%、目標年間平均分配率は13.6%(いずれも税引き前)と書いてあったそうだ。
「分配シミュレーションを見ると、100万円を投資したら、10年後に約136万円になるというものでした。利回り5.5%なら10年で155万円になるはずでおかしいなと思ったのですが、よく読み込んでみると、分配金だけでなく元本も少しずつ戻ってくる仕組みだったのです。つまり、毎年、元本の残高は減り、その残高に対して一定割合の分配金がもらえるというわけです。そして、10年目の償還時には残った元本と分配金がもらえて、最終的に136万円になるという計算でした」
太陽光発電は10%程度で回るものだが、そのうちの3.6%を出資者に還元する「年3.6%」の商品と考えればわかりやすい。ちなみに、20年の売電が約束されているのに、出資者に分配するのは最初の10年だけだから、11年目以降は事業者の儲け。
「さらに、この発電事業を行っていくうえでトラブルが生じたら、分配金を減らすというスキームも入っています。つまり、太陽光発電事業の運営リスクを出資者が取っているということです」
しっかり発電・売電されれば、無理はない運用商品と言えるだろう。なお、「エコめがね」というサイトから、リアルタイムで発電量などをチェックすることができる。とはいえ、最近も「ワインファンド」の破産が話題になったばかり。不安も多い。少額の自己資金でも比較的高利回りで運用することができる魅力的な商品だが、このようなリスクをしっかり理解し、自分なりに納得したうえで投資を検討してみるのもよさそうだ。
◆販売されている太陽光発電ファンドの例
・エコの輪太陽光発電ファンド(運営:エコスタイル)
藤本氏が投資したのはこの1号ファンドで、広島県内の2か所で発電しているもの。買取単価は36円と32円で、利回りは3.6%。現在は5号まであり、募集を終了している。ファンドによるが4号までは1口50万円から、5号は1口10万円から。現在、6号ファンドを準備中だという
・太陽光分譲ファンド(運営:ゼック)
’13年7月に「鹿島灘1号太陽光発電所」が発電を開始。現在は7号まで稼働中。これまで年間6%程度の分配を継続している。1号案件では出資者を集めるのに苦労したというが、実際に稼働し分配を行っていくうちにさまざまなメディアに取り上げられ、今では販売期間中に完売する人気商品に
◆近年話題になった“ユニークファンド”
『ワインファンド』
ワインを寝かせて値上がり後に売るはずの投資ファンド「ヴァンネット」が今年3月に破綻し、現在は破産管財人の管理下にある。1人平均700万円の被害。「セレブな投資」と煽った著名人の責任問題も
『レセプト債』
米国の医療機関の診療報酬を保険会社に請求する権利を証券化するとして、主に日本人から1800億円を集めた。運営元の社長らが私的に流用していたとして昨年7月、米司法省に詐欺罪で起訴された
『ラブホファンド』
1口50万円の出資でラブホテルのオーナーになれば、年8.4%の高利回りという触れ込み。’10年に破綻した。知人を紹介すると最大5%のプレミアムという怪しい勧誘も駆使。ネットで大人気だった
『安愚楽牧場』
7万人から4200億円を集め、豊田商事事件を上回る被害を出して’11年8月に破綻。和牛オーナーになれば、牛肉と分配金が得られるはずだったが、投資先の牛が実在しないなど詐欺だったことが判明
『映画ファンド』
映画制作に個人出資する「映画ファンド 忍SHINOBI」は興行収入が伸びず、残念ながら元本割れしたが、映画ファンを虜にした。同様の商品に、アイドルやレストランのファンドなども
『林野庁「緑のオーナー制度」』
スギやヒノキなどの国有林に出資し、伐採した木材の収益を分配する計画で、林野庁が全国から500億円を集めたが、大半が元本割れ。出資者が国を訴えた裁判は説明義務違反で国の敗訴が確定した
【金森重樹氏】
実業家。東京大学卒業後、ビジネスプロデューサーとして活躍。宮古島に総工費6億円のメガソーラー発電所を建設。太陽光発電事業やホテル再建投資など幅広く事業を展開
【藤本 健氏】
ソーラーマニアライター。自ら太陽光発電に投資しているソーラーマニアのライター。’15年に「太陽光発電ファンド」を知り、50万円分出資。「家電Watch」でソーラーリポートを連載中
取材・文/マネ得「太陽光発電」取材班 図版/ミューズグラフィック
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