2016/04/25
ドローンで太陽電池を守る、空からホットスポットを検知し即日共有
スマートジャパン 4月22日(金)13時25分配信
2012年のFIT(固定価格買取制度)開始以降、日本でも太陽光発電設備の設置が増え、普及が進んだ。しかし、FITの買取価格低減やメガソーラーの最適立地の減少などが進む中、今後は建設した太陽光発電設備をいかに正しく運用し、高い発電量を維持していくかという視点が重要になってきている。この流れの中、経済産業省 資源エネルギー庁でも保守点検を強化するような方針を示しており、いかに効率よく大きな敷地の太陽光発電設備の保守・点検を実現するかが重視されるようになってきた。
【ソーラーモジュール検査サービスの全体イメージ】
今回のソフトバンク・テクノロジー、エナジー・ソリューションズ、サイバートラスト、M-SOLUTIONSの4社による協業も、これらの状況に対応するためのものである。
ソーラーモジュール(太陽光発電パネル)の故障原因としてよくあるものに「ホットスポット」と呼ばれる現象がある。これは、製造時のはんだ不良などの不具合や、落ち葉など異物の付着が原因となり、その部分が発熱してモジュールが破損する現象である。ホットスポットにより線が焼き切れた場合にはそのストリング(1系統)で全く発電できないという状況に陥るケースもあり異常発生時に迅速に対処することが重要である。
ホットスポットとなっている部分は、周辺よりパネル温度が高温になっているため、赤外線(IR)カメラを利用することで発見できる。赤外線カメラの検査により、ホットスポットを早期発見することで、発電量の低下やソーラーパネルの交換コストを抑制することが可能となる(図1)。
●ドローンとクラウド、赤外線検査を組み合わせた保守・点検
今回4社が協業したのは、この赤外線カメラをドローンに載せ、クラウドコンピューティングと組み合わせることで、ドローンの自動飛行や点検結果の即日共有などを実現するシステム「ドローン&クラウド ソーラーモジュールIR検査システム」の開発のためである。
同システムは、クラウドからドローンをコントロールするドローンステーションに航路情報や発電所情報、検査結果情報などを送り、その情報をもとに赤外線カメラを搭載したドローンを自動航行させ、撮影する。このドローンの空撮情報や位置情報、赤外線サーモグラフィー情報などを逆にドローンステーションからクラウドに送り、その結果を分析して、モジュールの検査報告書を作り、オーナーや管理者などの判断材料とする。
●プロトタイプでは報告書提出まで従来比5分の1に
プロトタイプでは、クラウド上で事前に図面に対応したフライトスケジュールを生成し、自動航行機能を搭載したドローンにオンラインで配布することで、効率よく安全に検査することを可能とする。これにより検査コストが大幅に削減される予定である。さらに、従来はモジュール位置の特定と解析、報告書を作成、事業者への報告書の提出まで含めて通常4〜5日程度必要だったが即日での撮影データ収集と解析が可能となるという。
プロトタイプ製作における4社の役割は、エナジー・ソリューションズがソーラーモジュール検査システム、赤外線サーモグラフィーデータ解析システムの開発などを担当。サイバートラストが、第3者認証機関としてドローンとクラウドサービスの電子証明書認証による送受信データの暗号化、ソフトバンク・テクノロジーがクラウド環境でのデータの蓄積・解析、M-SOLUTIONSが位置情報を用いて地図上に赤外線センサーの情報をマッピングするアプリの開発を担当している。
●目視から完全自動化へ
今回開発したプロトタイプでは、最終的にドローンのサーモグラフィー画像から、ホットスポットの判別を目視で行う必要があるが、今後サービス開始に向けては完全自動化することを検討しているという。さらに、ソフトバンク・テクノロジーが提供する「IoT構築サービス」により、データの収集までは行えるが、その後のレポート化は手作業が発生している。これらも自動的にレポートが作成されるようにする予定だ。最終的にこれらの自動化機能を強化した上で、2016年8月のサービス提供開始を予定している。 |