2016/04/11
コンクリートを使わない太陽光発電所、3万枚のパネルで2400世帯分の電力
スマートジャパン 4月6日(水)9時25分配信
茨城県の水戸市の中心部から10キロメートルほどの場所に「春の木ソーラー発電所」が誕生した。敷地の面積は13万平方メートルに及び、周辺には住宅もある。発電所は全体を3つのエリアに分けて、そのうち2つのエリアで太陽光パネルの設置が完了して発電を開始した。
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太陽光パネルの数は合計で約2万枚にのぼり、残る1つのエリアにも1万枚を設置する。3つ目のエリアは2017年1月に発電を開始する予定だ。各エリアの発電能力は2.8MW(メガワット)で、合計すると8.4MWになる。年間の発電量は880万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して2400世帯分に相当する電力を供給できる。
この発電所は太陽光発電システムを開発・販売するLooop(ループ)が建設した。発電した電力は固定価格買取制度を通じて東京電力に売電する計画だ。すでに運転を開始した2つのエリアでは3月30日と4月1日に送電を開始している。2013年度に固定価格買取制度の認定を受けたため、買取価格は1kWhあたり36円(税抜き)になる。3つ目のエリアだけは2012年度に認定を受けていて、買取価格は40円である。
太陽光パネルは3種類の製品をエリアごとに使い分ける。第1のエリアはシリコン系の単結晶タイプ(最大出力275W=ワット)、第2のエリアは多結晶タイプ(260W)で、これから設置工事に入る第3のエリアでは両面ガラスの単結晶タイプ(280W)を採用する。3種類のパネルによる発電量の違いや経年劣化の影響などを比較する狙いがある。
特に両面ガラスの太陽光パネルは経年劣化を抑える設計を施している。従来型の製品はパネルの裏面を樹脂製のバックシートでカバーしている。これに対して表面と裏面を同じ厚さのガラスで覆う構造にして、水や熱や衝撃によるダメージを防ぐ。パネルの故障率を小さくして寿命を長く保てる点が特徴だ。
植林や排水設備で景観と防災に配慮
パネルの設置角度は発電所全体で15度に統一している。Looopの太陽光発電システムはコンクリートなどで基礎を造らずに、強度のある単管パイプを地中に埋設する方法で架台を設置する仕組みだ。施工の専門会社でなくても太陽光発電所を建設できるようにするためである。春の木ソーラー発電所でも同様に単管パイプで架台を組み上げて太陽光パネルを設置した。
発電所の周辺に住宅があることから、景観や防災にも配慮した。敷地の外周に土を盛って堰を造り、雨水が敷地外に流れ出ない構造にした。さらに堰の部分にはキンモクセイとツツジを植林して、木が成長すると発電所の中が周辺から見えにくくなる。
この建設用地は約20年前に不動産会社が宅地を分譲する目的で林地を開発した場所である。ところが宅地開発の計画が破たんしたために10年以上も放置されてきた。当初の目的を変更して太陽光発電所を建設することに対しては近隣住民の反対もあったことから、特に防災対策には念を入れた。
Looopは茨城県から林地開発許可を取得したうえで、周辺地域を含めた排水設備を取り入れている。発電所に隣接する調整池を買い取り、近隣の住宅からの排水に加えて発電所の敷地内からの排水も受け入れるように改良した。敷地内には排水管を通して雨水が調整池に流れる構造になっている。これから太陽光パネルを設置する3つ目のエリアでは、地中に水を集める浸透池を整備する。
茨城県は日射量に恵まれていて、メガソーラーが続々と誕生している。そうした中で県内を流れる鬼怒川(きぬがわ)が2015年9月に決壊して大きな被害が発生した。川の近くにあった太陽光発電設備が損壊したために、被害が拡大してしまう問題も発生している。近隣住民の不安を解消するためにもメガソーラーの防災対策が欠かせない状況だ。 |